ルビーが見つかる瞬間に感じること
ルビーの見つかる瞬間です。場所は、ミャンマー北部カチン州にあるNam-yaルビー鉱山です。右手の先にある黒っぽい石たちが「コランダム」、ルビーと同じ鉱物です。
その中にほんの一握りのコランダムが、最初から赤い色をしています。
…それがルビーです。コランダム(Al²O³)酸化アルミニウム自体は、そんなに珍しい鉱物ではなく、上の黒っぽい石たちがそれです。そのコランダムに、ごくわずかのクロムが混入することで赤くなったのがルビーです。(諸説ありますが、0.5%の割合でクロムが入ると赤くなるといわれています)
実際の現場では、黒いコランダムは、あまり希少性の高くありません。処理をしてどのような姿になっても、宝石としての格は低いのはそのためです。
宝探しをしている現場で「宝物だ!」と感じたものが宝石だと思うのです。
天然無処理で美しいルビーの特徴は、宝石の特徴そのもの
天然無処理で美しいルビーの特徴…
1)人為的でない、しかし人を魅了する美しさ
2)金の1/10,000、ダイヤモンドの1/200の究極の希少性
3)何千年経っても変化しない驚くべき耐久性
これらの特徴を持っているのがミャンマー産の無処理で美しいルビーです。
購入する時にあまり変わらない価格であっても、いつか手放す時に100倍ぐらいの価格差になります。
2012年のクリスティーズの落札結果ですが、左のルビーはタイランド産の加熱処理をして美しさを改良したルビー。そして右側が天然無処理で美しいミャンマー産ルビーです。カラット当たり100倍の価格差になりました。
いつか手放す時の値段が高いから…という損得の話をしているのではありません。
私たちは「宝石=宝の石」を持った人が、いつか手放す時にガッカリする方が、おかしいのではないか、と思うのです。
800年前のルビーのインクルージョン
宝石ジュエリーは、宝石が装着された宝飾品です。通常は、金や銀、プラチナなどの貴金属で成形されたジュエリーの枠に宝石がセットされています。
写真の指輪は、13世紀のモノで「指輪88」淡交社で紹介されています。
本文より引用>
愛の証の指輪
心地よい小さなルビーがイエローゴールドにそっとセットされた、可愛らしい指輪です。あぶみ型のリングの上に、少し背の高いカボションカットのルビーは、蛍光性が強く、内包物の状態からみて、ビルマ(現ミャンマー)産の無処理で美しいモノです。握り合う手のリングは、イタリア語で忠実を意味する「フェデ」と呼ばれ、愛を伝えるデザインとして使われていました。握り合う手のモチーフは二人の愛の証として古代ローマ時代からあり、中世に復活した後、12世紀にはイギリスでも用いられるようになりました。以来、婚約、結婚指輪として好まれて来たスタイルです。最近は、結婚指輪といえばダイヤモンドが一般的ですが、中世からルネッサンス期にかけての多くの指輪には、愛やハートの象徴としてのルビーが使われていました。<引用ここまで>
この指輪を手に取った時に感じたのは、実際にルビーを贈り、またそれを受けて結婚した二人のことです。もし、このルビーリングが無ければ、実際に800年前に結ばれた二人の事を思うことはありません。それが、宝石ジュエリーの凄いところであり、ルビーがそのことを覚えているような気がしました。
そして、もう一つ… 小さなルビーは、ミャンマー産の特徴を示しており、天然無処理で美しいモノですが、800年経った今も、先ほど見た去年採掘された新しいルビーと何も変わらないことに驚きます。経年変化が無いのが宝石の定義の一つですが、それを目の当たりにしたわけです。